2011.09.10
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担当:
山田順
前回、「ソーシャルメディア革命なんて幻想だ!」ということを書いた。そして、そのなかで、ソーシャルメディアを「素晴らしい」という論者は、じつは一般ピープルのことなど考えていないということを書いた。とくに、IT業界のみなさんは、この傾向が強い。もっと言うと、彼らはネット万能論者であり、ネットという高度情報化社会では、世界中の人々が情報を共有し、インタラクティブにコミニュケーションすることで、人類社会は発展し、世界は一つになるという理想論者である。
しかし、では、私たち一般ピープルは、ネット生活をすることで、高度情報化社会の一員となり、ソーシャルメディアを駆使することで高度情報人間になれるのだろうか? ツイッターやフェイスブックを使いこなすことで、高度情報人間として、有益かつ楽しいリアルライフを送れるのだろうか?
冗談ではない。絶対に無理である。なぜか? 答えは簡単だ。日本人として日本語を使っている限り、いくらソーシャルメディア革命に参加しようと、革命の恩恵に預かれるわけがないからだ。
1990年代の半ば、インターネット時代が始まったとき、「世界の人とコミュニケーションできる時代がやってきた」とバラ色楽観論を唱えた人々がいた。しかし、いまの日本で、そんなことをしている人がいったいどれだけいるだろうか? 私は、仕事柄、英語サイトも検索したり、知り合いの英語ピープルと拙い英語でメール交信したりするが、日本の一般ピープルで、そんなことをしている人はほとんどいないだろう。まして、SNSを英語でやっている日本人となると、数えるほどだと思う。
ネットは確かに、インタラクティブな情報ツールだが、悲しいかな、言語の壁で、日本人は「世界100人村」の住人であっても、そのなかの極東郡日本村の住人としか交信していないのだ。
ということは、単純な話、日本の一般ピープルは、情報人間にはなれないのだ。なぜなら、ネットの世界は9割が英語でできているからである。現在、ネットには膨大な量の情報が蓄積され、その情報は、ソーシャルメディアを通じて増える一方である。しかし、そのほとんどが英語だ。つまり、ネット界は、エーゲ海ならぬ「英語海」なのである。
したがって、この英語海で、ネットサーフィン、あるいはSNS交信するには、英語が標準語。日本語だけでは、情報のビックウェイブに乗ることすらできないばかりか、溺死すらしてしまう。おそらく、全ウェブ内で日本語が占める割合は、世界人口に日本人の人口が占める比率と同じはずで、わずか2、3%ぐらいだろう。私たち一般日本ピープルは、そんな狭い狭い極東郡日本村のなかで、幻想の高度情報化社会にアクセスしているだけに過ぎないのだ。
ネットにはゴミ情報しかないと言われたのは、もはや過去のこと。現在のネットは、学術機関などのデータベース、企業のコーポレイトサイト、経済情報、投資情報、個人のブログ、SNSなどが充実し、英語さえできれば宝の山状態となっている。
しかし、そんなお宝情報に、私たちはダイレクトにアクセスできない。
「ソーシャルメディアってやっぱすごいよね!」と言っている人たちは、このことをわかっているのだろうか?「ソーシャルメディア革命」「フェイスブックで世界中にお友だちをつくろう」なんて言っている人たちは、英語ができるのだろうか?
じつは民主主義も資本主義も英語でできている。ネットもそうだ。ネットの言語であるHTMLも英語だ。だから、私は、ネットビジネスをやろうという若者、IT企業を目指す若者には、「ネットをやる前に英語をやれ!」と言っている。これは、自身の反省に基づいている。この年になって、英語がもっとできていたら、人生は違っていただろうと、つくづく思う。パソコン教室にいくら通っても、職はないが、英語ができればなんとか職はある。日本人SEくんはリストラの嵐だが、インド人SEくんは引く手あまただ。
ここで、「ネットより英語」という一例を挙げてみよう。国内はデフレなのに超円高のいま、海外投資こそが確実にマネーを増やす方法だ。そこで、優良な海外のファンドにネットを通じて投資しようとすると、たとえば「ヘッジワールド」(http://www.hedgeworld.com)のようなヘッジファンドの情報サイトに登録し、情報種集することになる。
とはいえ、英語ができなければ、それもかなわない。また、発展途上の翻訳ソフトを駆使したとしてもうまくいかない。というのは、こうしたサイトには膨大な数のファンドが登録されており、そのなかからどれを選ぶか、利回りなどの条件検索を、まずは英語でする必要があるからだ。
そうして、どれを購入するか決めたら、まず、ファンドレポート(有料)を購入し、クレジットカードで決済する。さらに、運用会社(asset management company)には、「○×ファンドを購入したいので、目論見書(prospectus)と購入申込書(application form)を送ってほしい」と、英語でメールを書かねばならない。こうして購入に漕ぎ着けたら、その手続きには、(1)申込書(2)パスポートのコピー(3)住所確認書類(クレジットカードの請求書の写しなど)が必要となる。もちろん、どれも英文であり、さらに、これに、各書類が法律的に有効かどうかの認証(personal authentication)を、弁護士などに頼んで作成してもらう必要がある。
このようにして、日本からでも、ヘッジファンドへの投資をスタートさせることができるが、英語ができないと、優良なファンドの購入は取り扱っている一部の国内金融機関を通して行うことになる。そうすると、運用手数料などはバカ高く、とても投資に見合わない。日本の金融機関は、英語ができない一般ピープル相手に手数料(要するに翻訳料、手間賃)で儲けているだけだからだ。
というわけで、「ネットより英語」「SNSより英語」ということを、私は声を大にして言いたい。いまの日本の一般ピープルに必要なのは「ソーシャルメディア革命」ではなく「英語革命」のほうなのだ。
*画像「ブログ用フリー画像素材・写真素材のblog.フォト」より

WRITER PROFILE
山田順
『女性自身』編集部『カッパブックス』編集部を経て、光文社ペーパーバックスを創刊、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。近著に『出版大崩壊 電子書籍の罠』(文春新書)。川崎順平、神山冴などのペンネームで、著書多数。