2011.11.26
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担当:
山田順
ある外資系PR会社の人間から、「最近公開されたグーグルのThink Insightsはすごく便利だ」という話を聞いた。「これを使うとメディアの特性やサイトのリアルタイムの状況がわかる」という。シンク・インサイツ? なんだそれは?と、さっそくアクセスしてみて仰天した。まずアクセスしたのは、彼に教えられた「Think Insights」内の「Planning Tools」。ここには、マーケッター向けのデータが満載で、検索によっていろいろなデータが導き出せるという。
そこで、この「Planning Tools」の画面にある「Real-Time Insight Tools」をクリックして、広告プランナー向けの「Ad Planner」を選んで、その画面に行くと、Which websites attract your target customers? という問いかけの下に、検索窓がある。
この検索窓に、調べたいサイトのURLを入れて検索してみると、なんと、そのサイトのユーザーのプロファイル情報が現われるのだ。
ここでは、当然、この「Digital DIME」のURLである digital-dime.comを打ち込んでみた。すると、現われたのが、下の画面である。




では、ユーザープロファイルを見てみよう。この「デジタルDIME」のユーザーは、性別では男性が68%で女性が32%と圧倒的に男性が多い。また、学歴は、高卒が28%で、それ以下が7%、短大卒が10%、大学の学部卒46%、大学院卒1%となっている。
さらに、年収もわかり、299万円以下が11%、300万~499万円未満が最大で43%で、この二つの階層で半数以上を占めている。その上となると、じょじょに減っていき、年収1200万円以上の層は0%。つまり、年収の高い層はこのサイトをまったく見ていないことになっている。
また、ユニークビジター数は2011年の夏から増え続けていて、最近、急増していることもわかる。さらに、ユーザーが多いのが富山県、大分県などで、ユーザーがほかにどんなサイトを訪問しているのかもわかる。
企業の広告関連部署や広告代理店は、常にメディアの媒体としての価値、そのユーザーの属性情報を求めているが、なんのことはない、サイトに関してはグーグルが、このようにちゃんと用意してくれていたのだ。
これを面白いと思った私は、調子にのって、新聞、テレビ、雑誌のサイトのURLを次々に打ちこんで、視聴者や読者のプロファイル情報を見始めた。そうして、半日ほどがあっという間にたってしまった。
たとえば、朝日新聞のサイト(asahi.com)のユーザーは、性別だと男性77%、女性 23%で、65歳以上が3%いて、年収15万ドル以上が2%いる。これに対して、読売新聞のサイト(yomiuri.co.jp)のユーザーは、性別だと男性70%、女性 30%で、65歳以上が3%と朝日と同じだが、年収15万ドル以上は1%となっている。
ちなみに、ニューヨークタイムズ(nytimes.com)のユーザーは、性別だと男性59%、女性 41%で、65歳以上は7%、年収15万ドル以上はなんと11%もいる。
多くのメディア企業の収益の柱は広告である。それで、広告獲得のために視聴者や読者のプロファイルをデータで示し、広告料金の一覧表を載せた「媒体資料」というものをつくる。昔は、この媒体資料をメディアの営業担当者が持ってクライアントに営業して歩いたものだ。それをいまは、グーグルがやってくれる。時代は変わったと、つくづく思った。
しかし、そんなことがあってすぐ、ある広告代理店の若い人間にこの話をしたら、「なんだ。そんなことも知らなかったんですか? グーグルのThink Insightsを見るなんて、これからは常識ですよ。なにしろ、ウエブ広告はいまや行動ターゲティングの時代ですからね」と、あっさり言われてしまった。
それにしても、グーグルはすごいと言うしかない。ユーザーの行動履歴、プロファイルを集めまくり、それを誰でも使えるかたちで公開しているのだ。これは、メディアのサイトだけの話ではない。著名なブログなら、同じようにユーザーのことが手に取るようにわかる。また、「Think Insights」には、ほかにもいくつものカテゴリーがあり、それぞれいろいろな検索ができる。たとえば、「Real-Time Insight Finder」では、あるキーワードの検索が時間とともにどう変化し、世界のどの地域でもっとも検索されたか、なんてこともわかる。
たとえば、最近注目のキーワード「TPP」(環太平洋パートナーシップ協定)を地域を日本に限定して検索すると、この1年間ずっと平均していた検索数が10月から急増し、11月初旬にピークに達していること。地域別アクセスでは、高知県、秋田県、滋賀県の順だということがわかる。フェイスブックなどのSNSサイトの内情も調べられる。キーワードを二つにして、その検索変移を比較したり、ユーチューブ上のコメントを調べたりすることも可能だ。
この「Think Insights」は、これまでグーグルが「Google Insights」としてベータ版で公開していたものが集約されたものだという。これまで、グーグルが別々に公開してきたデータも含まれ、それらを1か所にまとめて使いやすくしたものだ。まだ、日本語版はないが、それにしても、やはりグーグルは恐るべきウエブ企業だ。公開されているデータの向こうには、非公開のプライバシーに関する膨大なデータがあるはずである。
ということは、オンライン生活をしている人間のすべてのデータは、すでにグーグルによってすべて握られていると考えていいだろう。

WRITER PROFILE
山田順
『女性自身』編集部『カッパブックス』編集部を経て、光文社ペーパーバックスを創刊、編集長を務める。日本外国特派員協会(FCCJ)会員。2010年、光文社を退社し、フリーランスに。近著に『出版大崩壊 電子書籍の罠』(文春新書)。川崎順平、神山冴などのペンネームで、著書多数。